ご質問集
注)下記回答内容は弊社の経験に基づいて法律の解釈を行い、お答えしております。
関係機関に確認を取る等は行っておりませんのでご了解ください。
INDEX
Q1: 耐電圧試験はしなくてはいけないの?
A: はい、以下の事柄に該当するものがあれば試験対象です。
交流/300Vを超える電路で使用の
① 絶縁用保護具(電気安全帽、長靴、手袋)
② 絶縁用防具(絶縁シート、絶縁板)
③ 活線作業用器具(フック棒、ディスコン棒)
③ 活線作業用装置(活線用作業車、絶縁梯子、絶縁台)
等が対象です。
法律的には
●定期自主検査(労働安全衛生法 第45条)
事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、労働省令で
定めるところにより、定期的に自主検査を行い、及びその結果を記録しなければ
ならない。
●労働安全衛生規則 第351条(絶縁用保護具の定期自主検査)
事業者は、第348条に掲げる絶縁用保護具については、6ヶ月以内ごとに1回、
定期に、その絶縁性能 について自主検査を行わなければならない。
詳しくお調べになりたい方は関連法規ページへ
Q2: 接地用具、検電器も耐電圧試験しなくてはいけないの?
A: 法律上では活線に直接もしくは間接的に触れることを想定していると思われ、停電作業時に使用する電気安全用具は”試験対象外”です。ただし、検電器については使用状況により試験することをお勧めします。
近年、安全衛生管理は特に厳しくなっているようで、誤操作により感電の危険
が高い検電器、接地用具等も実施している会社も多くございます。
また、下記状況により活線作業用器具とみなす場合があると考えられ、
状況に応じて試験が必要となると考えられます。
①活線に直接触れる(充電していることを確認する、電圧を測定する等)
②対象電路は停電であっても周囲の活線に触れてしまう可能性がある
対応する絶縁用保護具を身に付けて検電器等を握っていれば試験を行わなくても
良いと解釈出来る場合もあると思いますが、対象電路が特別高圧以上の場合は
特別高圧に対応した保護具は無いため、無条件に試験を行うことをおすすめします。
Q3: もし耐電圧試験をやらなかったら?
A: それに伴う“罰金、罰則”は条文で有るようですが、実例は把握しておりません。
労働安全衛生法 罰則 第120条(第45条に対する)=50万円の罰金
近年は、作業員に対する安全には特に厳しくなっているようで、電力会社はもちろん
鉄道、ビル管理会社、消防署、電気工事店等、他業種に渡って実施しています
Q4: 試験基準(試験方法)等は決まっているのですか?
A: 下記法令及び参考資料に基づいて行います。
労働安全衛生規則第351条
絶縁用保護具等の規格
JIS T 8010 「絶縁用保護具、防具類の耐電圧試験方法」
産業安全コンサルタント協会発行 「絶縁用保護具、防具等の試験基準」
Q5: 直流用(検電器等)に対して使用する試験機は交流用とは違いますか?
A: いいえ、労安法には規定が無いためすべて交流試験機で試験しています。
特に直流用検電器の場合は電圧を印加することにより測定用の内部抵抗が破損して
しまう可能性を考慮しなければなりませんので必要あればメーカーにも試験方法を
確認の上、印加箇所、電圧を決めています。
Q6: メーカーの取扱説明書の試験方法と違うのではないか?
A: はい、新品時の規格と定期自主検査時の試験基準は異なります。
例えば出荷時の検査は保護具・防具については試験電圧20kV、絶縁棒については
30cm/75kVとなっているものがあります。
(「30cm/75kV」はJIS C 4510(断路器操作用フック棒)に基づく規格です。)
これは新品、型式検定時に対する規格です。
定期自主検査は、労働安全衛生規則に基づいた点検であるため、試験の概要ページに
記載してある「労働安全衛生規則第351条解釈例規」及び「絶縁用保護具等の規格」に
基づく試験方法で行っています。
Q7: 製品そのものに耐用年数はあるのですか?
A: 法的には存在しませんが、メーカーによって取替え推奨時期があるようです。
特にゴム製品の場合、保管状態によって劣化等により自然と亀裂が入っている
場合が見受けられます。また、木製の絶縁棒は傷等の表面状態により高湿度の
環境下では含水量が増え絶縁抵抗が著しく低下することがあります。
劣化の状態については耐用年数や定期検査に関係なく外観検査や絶縁抵抗
測定等により日々管理されることをお勧めします。
Q8: すべての電気安全用具を試験出来るのですか?
A: いいえ、すべてでははありません
あまりにも古いタイプ、形状が複雑、水分の付着、電圧を印加することにより故障の
可能性があるもの等は試験できない場合があります。
※1 電気安全帽等に導電性のステッカーが貼ってある場合は剥がさせて頂く場合も
あります。
※2 フック棒、接地用具等で使用電圧が明示されていない物は試験電圧が決められ
ない為、お客様自身で使用している電圧をお聞きするようになります。
最近ではかなり特殊な形状の接地用具等が増えているようで、
その場合は現物を確認の上お答えすることになると思います。
Q9: 御社で試験をすれば6ヶ月間問題なく使用出来るのですか?
A: いいえ、弊社は6ヶ月先まで製品性能自体を保証するのではありません。
あくまで検査時点での合否ですので、使用前点検を必ず行い、使用頻度に応じて点検、
交換をして下さい。
Q10: この先当分使用しない物まで試験が必要ですか?
A: いいえ。ただし試験後6ヶ月経過したものは使用禁止です。
労働安全衛生規則第351条では6ヶ月を超える期間使用しないものまで試験を
行う必要はないと記述されています。
しかし、2項においてその使用を再び開始する際には試験を行わなければならない
とされておりますので使用開始前に耐電圧試験を実施することより使用可能となります。
使用する時期が明らかである場合、使用直前やタイミングに合わせて年に一度のみ
定期実施している場合もあるかと思います。
Q11: 耐電圧試験後はなにか表示されているのですか?試験成績表は発行されますか、発行料金は?
A: 試験済みであることを試験品表面に表示します。また、法令に定められた内容で試験成績表を発行致します。別途発行料金は頂いておりません。
労働安全衛生規則第351条第4項に定められた記録すべき内容を記載した
試験成績表を発行し、試験品によって異なりますが試験品本体には試験を行った日
のステッカーを貼るか、ハンコで明示しています。なお、不良となったものはマジックで
大きく不良の書き込みを致します。
試験のご依頼ページにステッカーとハンコの見本を載せてありますのでご覧下さい。
Q12: 使用している試験機はトレーサビリティ-がとれていますか?
A: 全ての試験機、計測器は年一回の校正試験を行っています。
試験品の成績表は無料で作成しておりますが、試験機の校正証明書や
トレーサビリティー体系図の発行がご必要な場合は別途有料とさせて頂いております。
法律上には校正の必要性について明示されておりません。ただし、絶縁用保護具等の
試験基準を定めたJIS規格
JIS T 8010 「絶縁用防具、保護具類の耐電圧試験方法」
には校正の必要性についての記載があります。
Q13: 放電抵抗棒の耐電圧試験は可能ですか?
A: 基本的には不可能です。
放電抵抗棒は電気を流すことを想定したものですので、過度な電圧を印加すること
により内部抵抗が加熱され焼損する可能性があります。そのため、基本的には電圧
を印加する試験はお断りしております。
放電抵抗棒については使用前に内部抵抗に異常がないかを抵抗計で測定し、
使用時には定期検査を行った絶縁手袋を着用してご使用頂くことで安全は保たれる
と考えます。
もし弊社で点検を行う場合、定期的に校正を実施済みの抵抗計で内部抵抗が
仕様値以内であることを確認し、かつ外観上の異常がないことを確認しています。
Q14: 盤の前などに敷く絶縁マットの耐電圧試験は必要ですか?
A: 新品出荷時には絶縁シートと同じ基準の耐電圧試験を行っているようですが、検定品ではありませんので定期検査対象外です。
しかしながらお客様により判断が分かれているのが実状だと思われます。
法律文の中では絶縁マットにはっきりと該当する定義はありませんが、試験が
必要なものの中に
「活線作業用装置」-対地絶縁を施した活線作業用車又は活線作業用絶縁台
という定義があります。
対地絶縁という文章を見ると絶縁マットは活線作業用絶縁台と定義されると考える
ことが出来ると言えるかもしれませんが、「絶縁用保護具等の規格」において活線
作業用装置は対象電路の2倍の電圧に5分間耐えることとありますので絶縁シート
と同じ試験時間1分間の耐電圧性能では活線作業用装置には該当しません。
また、絶縁シートと同じ「絶縁用防具」として定義しようとすると検定合格品でなければ
ならず、シートと同じ耐電圧性能を持っているとしても絶縁用防具には該当しません。
よって絶縁マットは労安法上の感電防止対策には当たらないと考えられ、あくまでも
補助的な対策となります。
ただし、万が一の接地感電事故対策であっても活線近接作業に該当しないような
普段の点検時には絶縁マットを敷いてあるのみの状況の場合もあると思われます
ので、最大限の安全性を考慮し自主的に定期検査対象と判断しているお客様も
多いということになります。
いずれの場合でも定期的に目視等で傷や亀裂がないかの外観点検を行うことを
お勧めします。
A: 弊社では試験実績はありません。
試験自体は不可能ではありませんが、絶縁防護管(法律の定義では絶縁用防護具)
は定期点検対象となっておりません。
対象となっているのは電路を直接もしくは間接的に扱うときに人体の感電防止に
使用する電気安全用具であり、構造物との短絡防止や保護に使用する絶縁防護管は
対象ではありません。
A: そのままでは試験は不可能です。
表面に付着した水分を通して短絡し試験品を焼損してしまうため、そのままでは
実施は不可能です。
水分を拭き取り放置した後試験を実施することも行いますが、多重構造の絶縁シート
や絶縁衣、伸縮式の絶縁棒の場合、内部に水分が浸透するとなかなか乾燥せず、
不良と判断する場合もあります。
表面が乾燥し、一時的に試験が出来たとしても例えば伸縮式の棒を内部に納めると
また水分が付着してしまうため内部まで完全に乾燥しないまま使用することは大変
危険です。
Q17: 付属品(安全帽の内装、絶縁手袋の保護手袋等)は付けた状態で送っても良いですか?
A: 出来るだけ外した状態でお送り下さい。
試験に必要のない内装部品や保護部品等は正確な試験実施のため、また水に
沈めての試験を行うため全て事前に外して試験を行います。
弊社で外す際、元通りに戻すように注意しておりますが、その際の破損や入れ違い、
紛失等に責任は負いかねます。
特に安全帽の内装は数量が多い場合、付け外しにかなりの時間を要するため
納期が大きく遅れる場合がございます。
付属品は全て外した状態でお送り下さいますよう、ご協力をお願い申し上げます。
A: 労安法上、測定の必要があるのは特別高圧の電路について使用する「活線作業用装置」(ただし、活線作業用の保守車、作業台について)のみです。
詳しくは「絶縁用保護具等の規格」をご参照下さい。
(ただし、新品時に適用されるJIS規格には漏洩電流についての基準値が定められて
いるものがあります。)
上記のもの以外の耐電圧性能については「絶縁用保護具等の規格」において
「試験交流の電圧に対して1分間(もしくは5分間)耐える性能を有するもので
なければならない」
とのみ記述されており、基本的には試験電圧を印加して絶縁破壊する(短絡する)か
どうかという基準で試験を行っています。
ただし、特に絶縁操作棒については、完全に短絡はしなくても抵抗が著しく低下して
いると漏洩電流が大きくなり、やはり感電の危険があります。
弊社では試験中に異常な発熱、発煙、臭い等が発生しないかを注意深く観察し、
短絡はしなくても耐圧不良とご報告することがあります。
また、測定値による確実な判断をするために耐圧確認区間(絶縁部に配置した
試験電極間)に対して絶縁抵抗測定を行い、2000MΩ以上を確認しています(※1)。
※1 ご要望があればクランプメータにより漏洩電流を測定することも出来ます。
ただし、その値が周囲環境や、水中試験の場合は水滴の付き具合等に左右され、
労安法にも断路器操作用フック棒のJIS規格にも不良となる基準値が示されて
いないため、通常は行っておりません。
Q19: 伸縮式の絶縁操作棒(ex 間隔測定棹等)の試験はどのように行うのですか?
A: 活線作業用器具に相当するため、使用対象電路電圧の2倍の電圧を最低使用長の間で5分間印加します。
断路器操作用フック棒のJIS規格から新品出荷時には30cm/75kVというのが通例のよう
ですが、定期検査時は労働安全衛生規則に基づく点検ですので上記の内容ということに
なります。
一番厳しく行うには30cm/75kVを引用し、全長を30cmごとに区切ってそれぞれ75kVを
印加するという方法が考えられますが、新品と同じ状態を保ち続けていなければならない
ため、必要以上に不良率を上げてしまう可能性があります。
ご依頼時には対象電路電圧とその時に使用する一番短い長さ(最低使用長)をお教え
下さい。電路に触れる先端を基準として最低使用長まで伸ばし、その間で2倍の電圧を
印加します。
特に使用対象電路電圧のご指定の無い場合は下記の通りと致します(あくまでも弊社で
行う場合の例です)。
AC 50 kV (45㎝毎に) 5分間印加 (但し、先端から8区間まで)
前述の理由から不良率を上げない程度の現実的な設定値として
45cmごと = 30cm×1.5 、 印加電圧50kV = 75kV/1.5
と設定しています。
これを先端から8区間で試験を行えば3.6m以上伸ばした状態で最大200kV(=400kV/2)まで
使用出来ることになります。
お客様のご使用状況に応じて例えば送電電圧の154kVで使用する場合、7区間目の3.15m
以上伸ばせば175kV(=350kV/2)まで使用できると解釈してください。
実際にはお客様のご使用状況をお伝え頂いて決定する等、お考えをお聞きする必要が
ございますのでご依頼時に一度お打合せさせてください。
Q20:耐電圧試験において法律に書かれている「1(もしくは5)分間耐える性能を有する」とは具体的にどのような判断基準なのでしょうか?
A: 労安法上は上記の通りの記述しかないため、法律の文章上では具体的な想定が無く試験実施者の判断に依存することになります。そのため判断基準はJIS規格を引用し「せん絡、発煙、著しい発熱などが生じる場合を不良とする」となります。
ただし、これでも抽象的ですので弊社においては、
①せん絡音、発光を伴い、完全に短絡するかどうか
完全短絡の判断は耐電圧試験装置の仕様に依存します。
弊社の場合、試験機によりますが試験電圧印加時に漏洩電流が数十mAを
越える場合、 試験機が耐圧不良と判断して自動遮断します。
漏洩電流が何mA以上を短絡という規定はありませんが、見た目としては
せん絡音、発光、発煙等が見られ、試験品に焦げ跡やピンホールが生じます。
それらの変化を併せて確認し、短絡したと判断します。
②完全短絡の判断に達しなかった場合
試験機は耐圧不良と判断しません。そのため試験実施者が試験中に
発音、発光、発煙、匂い等の変化を注意深く観察し、弊社の多くの経験から
正常時との明かな違いを判断します。
また、フック棒等の活線作業用器具の場合、試験機の判断上5分間耐えた
としても異常が確認されれば試験品に触れ、発熱、表面状態を観察し、
絶縁棒の先端~握り部間で1000Vメガーにより絶縁抵抗が2000MΩ以上
あるかを確認します。
上記の判断より、発熱が生じた場合は耐圧不良と同等として発熱不良、または
人感電流が0.5mA以上であることを考慮して絶縁抵抗が著しく低下している
場合も絶縁抵抗不良として抵抗測定値と共に御報告します。
A: 校正試験は行っておりません。
弊社で行っているのは法令に基づいた絶縁部に対する耐電圧試験のみです。
機能点検の項目も設けておりますが、検電器本体に表示されている使用電圧範囲
の最小値に近い充電部に触れてみて正常に発光・発音するかしないかを確認する
のみです。
耐電圧試験後に故障していないか、電池切れはないか等を確認するために
行っています。検電器チェッカーを使用した使用前点検と同等とご理解ください。
最小動作電圧の測定、検電回路の修理等はメーカーや校正専門業者へ
ご依頼下さい。
Q22: 充電部に触れる測定機器類の耐電圧試験は必要ですか?
A: 感電防止対策は法に定められた絶縁用保護具等をお使い下さい。
充電部に触れる想定の測定機器類は使用状況上、出荷時に耐電圧試験を行って
いるものもあると思いますが、労安法上は「絶縁用保護具等の規格」に適合するもの
でなければ感電防止対策の法的要素を満たさないと考えられます。
メーカーによっては規格を満たす構造を持つものもあるようですのでそちらをお使い
頂き耐電圧試験を行うか、確実な感電防止対策としては使用対象電圧に応じた
絶縁用保護具等を使用した上で測定機器をお使い下さい。